近年、「こどおじ」という言葉が注目を集めています。
成人男性でありながら実家で親と同居し、経済的に自立していない状態を指す言葉ですが、
果たしてこの「こどおじ」の流行は、不動産業界の陰謀なのでしょうか?
本記事では、こどおじと不動産業界の関係性について、その実態に迫ります。
「こどおじ」は不動産業界が生み出した造語なのか?
では、そもそも「こどおじ」という言葉は、
不動産業界が意図的に流行らせたものなのでしょうか?
この点について、明確な証拠はありませんが、
不動産業界がこどおじブームの追い風に乗った可能性は指摘できます。
なぜなら、現代の若者が「実家に住み一人暮らしをしないから」です。
SUUMOが発表した「賃貸契約者動向調査」では、
契約した賃貸物件である新居と以前住んでいた実家と
どちらの満足度が高いかアンケート調査したところ、
その結果「年代が若いほど実家の住宅性能の満足度が高かった」のです。
こうした若年層の実家ぐらしの急増で不動産業界の賃貸住宅の契約が伸び悩んだため、
こどおじという言葉を利用し、
一人暮らしを進めようとしたのです。
もともと「こどおじ」という言葉は、
インターネット上で自然発生的に生まれた言葉だと考えられています。
しかし、この言葉が広く認知されるようになったのは、
不動産関連のメディアが積極的に取り上げるようになってからです。
こどおじの存在が注目されることで、
不動産業界にも何らかの影響があるだろうと期待された面があるのです。
こどおじという言葉の起源と定着の経緯
「こどおじ」という言葉は、当初は
実家の子供部屋に住み続ける30代以上の男性を揶揄する言葉として使われていました。
その後、ツイッターやブログなどでこの言葉が拡散し、
徐々に認知度が高まっていったのです。
ただし、この段階では
「こどおじ」はあくまでもネットスラングの域を出ていませんでした。
それが一般的な言葉として定着するようになったのは、
2010年代後半に入ってからだと考えられます。
マスメディアがこの言葉を頻繁に取り上げるようになり、
こどおじという存在が社会問題化していったのです。
不動産業界によるこどおじブームの追認
こどおじブームが本格化する中で、不動産業界もこの現象に注目するようになりました。
住宅関連のメディアでは、
「こどおじ大国・日本の未来」といった特集が組まれるようになります。
こどおじの増加を、新たな住宅ニーズの発掘につなげようという狙いがあったのでしょう。
また、住宅購入の適齢期とされる30代のこどおじを、
潜在的な顧客ターゲットと位置づける動きも出てきました。
実際に不動産業界で、こどおじをターゲットにしたのが、
いい部屋ネットの「実家離れできない」というCMです。
このCMを簡単に解説すると、
実家離れできない兄に妹が「実家出なよ」と引っ越しを進める内容です。
このように実家ぐらしのこどおじを
一人暮らしを進めようとする動きがあります。
こうした動きは、不動産業界がこどおじブームを追認し、
新たなビジネスチャンスにつなげようとしている表れだと言えます。
不動産価格の高騰がこどおじを生み出した?
こどおじが増加した背景には、不動産価格の高騰があると指摘されています。
特に都心部では、若者の平均的な収入では住宅を購入することが難しくなっています。
高い家賃負担から一人暮らしを避ける若者も増えているのです。
つまり、こどおじの増加は、
若者の経済的自立を阻む社会構造的な問題が背景にあると言えるでしょう。
不動産価格の高止まりが、若者のこどおじ化を助長しているという見方ができます。
この点については、不動産業界も無関係ではいられません。
若者の平均的収入では住宅購入が困難な実情
総務省の調査によると、30代男性の平均年収は約450万円です。
一方で、都心部の新築マンションの平均価格は5000万円を超えています。
この価格差を考えると、若者が住宅を購入することは非常に難しい状況だと言えます。
ローンを組んだとしても、長期間の返済に苦しむことになるでしょう。
こうした状況下で、多くの若者が住宅購入を断念せざるを得なくなっています。
「いつか家は買いたいが、貯金が追いつかない」といった理由で、
こどおじ化する若者が増えているのです。
この点では、不動産価格の高騰がこどおじを生み出す一因になっていると言えそうです。
高い家賃負担から一人暮らしを避ける若者の増加
住宅購入が難しいだけでなく、賃貸物件の家賃負担も若者の重荷になっています。
特に都心部では、一人暮らし用の物件の家賃が高止まりしています。
若者の平均的な収入では、家賃を払うだけで手一杯という状態も珍しくありません。
そのため、多くの若者が一人暮らしを避け、実家に留まり続けているのです。
「家賃が高くて一人暮らしできない」というのが、
こどおじ化する若者の口癖になっています。
こうした若者の経済的自立の難しさは、
不動産価格の高騰と無関係ではないと考えられます。
こどおじの増加は不動産業界にとってマイナスなのか?
一見すると、こどおじの増加は不動産業界にとってマイナスに見えます。
実家に住み続ける成人男性が増えれば、一人暮らし用の物件の需要が減るからです。
賃貸マンションやアパートの空室率が上昇し、
不動産業界の収益が悪化するのではないかと懸念されています。
一人暮らし需要の減少がもたらす影響
こどおじの増加によって、一人暮らし需要が減少することは確かです。
特に、都心部の賃貸物件の空室率が上昇することが懸念されています。
若者の一人暮らし離れが進めば、不動産賃貸市場に少なからぬ影響が出ると予想されます。
¥こどおじの増加は、不動産業界にとって脅威であるというわけです。
実家の建て替え需要の増加というビジネスチャンス
こどおじの増加は、マイナス面だけではなく、プラスの面もあります。
実家の建て替え需要を高める効果があります。
こどおじが実家に住み続けることで、
古くなった実家を建て替える必要性が出てくるのです。
親の年金だけでは建て替え資金を工面できないため、
こどおじ自身が費用を負担するケースが増えています。
不動産業界にとって、
この実家の建て替え需要の増加は大きなビジネスチャンスと言えます。
新築住宅の販売はもちろん、リフォームや増改築の需要も見込めるからです。
こどおじの増加は、一人暮らし需要の減少という悪影響だけでなく、
実家の建て替え需要の増加というプラスの効果もあると考えられます。
不動産業界から見たこどおじ問題の本質
こどおじ問題は、単に個人の資質の問題ではありません。
むしろ、若者の経済的自立を阻む社会構造的な問題が背景にあると考えるべきでしょう。
不動産業界も、こうした問題の本質を見据えた上で、
こどおじ市場に向き合う必要があります。
同時に、こどおじの増加は不動産業界にとって新たなビジネスチャンスでもあります。
実家の建て替え需要の増加や、こどおじ向けの新しい住宅提案など、
こどおじ市場を開拓する余地は大いにあると言えます。
不動産業界には、こどおじ問題への適切な対応が求められていると言えるでしょう。
若者の経済的自立を阻む社会構造的な問題
こどおじ問題の背景には、若者の経済的自立を阻む社会構造的な問題があります。
非正規雇用の増加や賃金の伸び悩みなど、
若者の収入が不安定化している現状は看過できません。
こうした状況下で、高騰する不動産価格は若者の自立を一層困難にしているのです。
不動産業界としても、こうした社会構造的な問題を直視する必要があります。
若者の経済的自立を支援する社会基盤の整備は、
不動産業界にとっても重要な課題だと言えます。
単に若者向けの物件を供給するだけでなく、若者の収入の安定化や住宅購入の支援など、
総合的な対策が求められるでしょう。
こどおじ増加に伴う新たなビジネスチャンスの模索
一方で、不動産業界にとってこどおじの増加は新たなビジネスチャンスでもあります。
実家の建て替え需要の取り込みや、こどおじ向けの新しい住宅提案など、
こどおじ市場の開拓余地は大いにあると考えられます。
ただし、こどおじ市場を狙うためには、
従来の不動産ビジネスの発想を転換する必要があるでしょう。
こどおじのニーズを丁寧に汲み取り、
それに合った物件供給やサービス提供を行うことが求められます。
不動産業界には、
こどおじ問題を新たなビジネス機会と捉える柔軟な発想が必要だと言えそうです。
こどおじは不動産業界の陰謀なのか?まとめ
こどおじブームと不動産業界の関係性について見てきましたが、
こどおじが不動産業界の陰謀だと断定するのは難しいと言えそうです。
こどおじという言葉は自然発生的に生まれたものであり、
不動産業界はそれを追認する形で注目を集めたに過ぎません。
しかし、不動産業界が実家ぐらしというコンプレックスを
販促活動に利用していたというのがわかります。
同時に、不動産業界もこどおじ問題の本質を直視する必要があります。
こどおじの増加は、若者の経済的自立を阻む社会構造的な問題が背景にあるのです。
不動産業界には、そうした問題意識を持ちながら、
こどおじ市場に向き合うことが求められると言えるでしょう。
コメント